2014年のはじめの寒い日の夜、さあ寝ようかというとき。
「聞いてほしい話があります」という前置きのあと、妻から「あかちゃんができたみたいです」と知らされました。
僕はどう答えていいかわからなくて、「これからたいへんになるね」とだけ答えました。 この大きな出来事を現実のものとして捉えるには突然すぎたし、漠然とした不安もありました。
妻は数年前、病気で手術をしていて、婦人科で不妊症の診断もされていました。実際なかなか妊娠しなくて、やっぱりだめなのかな、という気持ちもあったはずでした。
僕たちにとってとっても嬉しいことだとわかっていたけれど、僕にはどうしても実感として捉えることができなくて、ひとこと言うのが精一杯でした。
妻のおなかはゆるやかに大きくなっていきました。
あるとき一緒に行った検診で、エコーに映る小さな小さなその姿を見て、僕はなんとなく、女の子だろうか、と思いました。
それから少しして、99%女の子ですね、という診断が出ました。
女の子であることがわかってから、名前を考えました。
名前に願いや意味を持たせたくなくて、語感がよく親近感のあることばから「みどり」を選びました。
なかなか現実感を得られない僕の気持ちをよそに、みどりは穏やかに、確実に大きくなっていき、そのうちエコーに入りきらなくなりました。
予定日を三日過ぎた九月二十一日の夜、妻は長い陣痛との戦いの中でも弱音を吐くことなく、みどりを産みました。
絶対泣くだろうと思っていた僕は、やっぱり泣きました。小さないのちが必死で生き始めようと泣き叫び始めるのを目の前にして、自然と涙が溢れていました。
今、みどりは二ヶ月になり、少し大きくなりました。新生児用のおむつは窮屈になり、ひとまわり大きいものに変えました。僕たちは眠っているみどりを起こさないよう、そっと暮らしています。
主な使用機材
Nikon D700
- Ai AF Nikkor 85mm F1.4D(IF)
- AF-S DX Nikkor 50mm F/1.4G
- SMC Pentax 67 105mm F2.4
- SMC Pentax 67 75mm F2.8 AL